Jリーグクラブ・水戸ホーリーホックを裏方としてサポートする、ボランティアスタッフのブログです。

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最終話 「そして飲み会へ・・・」

(あらすじ◆3-3で残り時間わずか。前線へ上げさせられた俺が、点を取るしか勝つ方法はないらしい。
中盤のドタバタした危なっかしい展開で、ボールをかっさらった怪しい影。ふ、古田くん!
「さあ・・・行くよ!」彼の右足から放たれたパスがもたらすのは、歓喜か脱力か?)

 →前回のお話

<登場人物>

主審・・・リーグ戦他チームからの持ち回りで試合の笛を担当。
選手としては「走れるトップ下」で鳴らす。スタミナを買われて審判を兼ねる場面多し。
当初は視野の確保に苦労したが徐々に順応、この役回りも色々勉強になると気に入ってきた模様。




ライナー性のボールがピッチを一刀両断。
ドタバタした流れで相手DF陣の足が止まっている中、俺は一足早くスタートを切っていた。
通ればビッグチャンス!でもちょっと長いんじゃないのか?
古田くんどっちかというとSだよな、懸命に走りつつしょうもない事を考える。

キーパー飛び出して、直接ボールをキャッチしようとする。ペナルティエリア手前でワンバウンド。
もう一歩、足りなかったか・・・と、何故かボールが俺に向かって戻ってきた!
古田くん、バックスピンをかけていたのか!!?こんなの漫画でしか見た事ない。


絶好の形だ。キーパーが出てきた分、シュートの選択肢は多い。
でもそれはかえってプレッシャーになった。右か、左か、股抜きか、それともループか。
コンマ数秒の躊躇が状況を悪くする。5番と8番、俺を潰しにかかろうと引いてきた。

打て!!誰かの声がした。その言葉に反応するように、右インサイドで転がす。
最後は自分らしい、基本のシュートを選んだ。キーパー足を伸ばし防ごうとするも紙一重ですり抜けてゆく。
ちょっと弱かったか?勢いはないがゴール右隅へ向かっている。



「・・・ガンッ!」ポストを叩く無情の音で、ボールがはね返された。
駄目だ、詰めなくては。走り出すも足にきていた。
5番が既に俺を追い越している。やっぱり俺じゃ決められなかった、石川すまん。
そう思った瞬間、足がもつれて転んだ。ああ、万事休す。

絶望と情けなさでかすんでいく俺の視界に、見慣れた背番号9。
風のような速さで5番を追い抜き、ボールに猛進していく。

石川がちらりとこちらを見やる。先輩、パス送りますから。
お前、そんなにも俺のゴールにこだわっているのか。
だけどもう駄目だ。さっきの場面でイメージ使い果たしちまった。
頼む、ここはお前が決めてくれ・・・心の中で懇願した。この時俺はひどく情けない顔をしていたと思う。


背番号9からは何の表情も読み取れなかった。
大きなモーションから思い切り右足を振りぬき、ネットを突き破らんばかりにゴール中央へ叩き込む。

・・・・・・そうだ、それでいい。やっぱり最後はお前なんだ。
俺は平静を装いユニフォームの砂を払うと、ゴールに背を向ける。
さあ、このロスタイムをきっちり守り抜こう。

そう思った矢先、背後から「ドーン」と衝撃。
鼻をすすり上げて顔面をぐしゃぐしゃにした男が、俺に飛びついてきた。
石川、お前泣いているのか。
馬鹿、試合はまだ決まってないんだぞ・・・って、ここで試合終了の笛。
主審空気読みすぎだろう!あれれ、主審もらい泣きしてるじゃないか。


自陣からワッ!と歓声が上がり、皆こちらに向かって走ってくる。
まるで優勝したかのようなテンション。子供や犬のように飛び跳ね、よくわからない叫び声を上げている。

いつの間にか俺を中心に輪ができ、黒沢さんから衝撃の一言。「よーし、胴上げだーー!!」
ま、待ってください黒沢さん、ここは昭和ですか!?

爆笑の後、俺はかつぎ上げられ「わっしょい!わっしょい!」と2度、3度と宙に舞う。一体何なんだこれは。
前山さんの子供が輪の外ではしゃぎ回り、古田くんはいつの間に持ってきたのか、カメラで情景を収めている。
わけがわからないけど、めちゃくちゃ嬉しかった。


今日の試合は伝説として、飲み会で集まるたびに語られるのだろう。

(おわり)

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第30話 「さあ・・・行くよ!」

(あらすじ◆市民リーグ1部残留のかかる死闘も佳境。
ただでさえ強い相手なのに、石川の無茶振りから俺が点取って勝てという流れになった。
俺はシュート苦手だし、上がった中盤の穴はどうするんだよ?と思ってたら39歳FW米村さんが
「大丈夫、俺戻るから」と。大丈夫も何もあんた、守備なんかできないでしょうが!)

 →前回のお話

<登場人物>

15番・・・敵のチャンスメーカー。技術はあるが好不調の波も激しい感じ。
本来なら俺じゃ太刀打ちできない相手だけど、今日に限っては予備動作で何をやりたいか読めてしまう。
とはいえ彼を抑えても、サイドの展開で攻めてくるから厄介だ。




もともと敵の15番にはボールがよく集まる。
今日はたまたま俺が抑えられたから目立たなかったけど、決して下手なわけじゃない。
マッチアップが米村さんに変わったので当然、狙ってくる。

15番はこれまでの鬱憤を晴らすように、フェイントも入れずドリブルで突っかけてきた。
米村さん、意気込みは凄いけど身体がついて行かない。踏ん張りきれず尻もちついてしまう。
ほら、言わんこっちゃない!条件反射で戻ろうとした俺を、石川が目線で制する。今戻っちゃ駄目です、と。

ここで一つの幸運。ピッチのデコボコ(雑草が生えていたらしい)で15番のコントロールが乱れ、
ボールは米村さんの足元へ吸い込まれた。何とか立った米村さん、モタモタとキープ。
体勢を立て直した15番、そして17番も奪いにかかる。ああ、見ちゃいられない。

混戦の中で、誰かが米村さんに激しくタックルを浴びせ、ボールをかっさらった。
・・・ふ、古田くん!米村さんが無様にでんぐり返る。
古田くん、強引な時は強引だ。そうそう、いつかのコンパでも・・・
って、今はそんな話してる場合じゃない。

俺と古田くんの目が合う。
『さあ・・・行くよ!』アイコンタクトだけじゃなく、
彼は実際そんな言葉を口走ってるようだった。目がイッている。

(次回へ続く)

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第29話 「皆が気持ち悪い」

(あらすじ◆3対3で残り時間わずか。力を絞りつくす死闘は、残留の重圧もかかっている。
詰めの一手に頭をフル回転させる俺に石川、「点取ってください」とまさかの無茶振り!
誰が取るとか言ってる場合じゃないっちゅーの!
っていうかお前、俺がシュート下手なの見てて知ってるだろ?)
 →前回のお話

<登場人物>

8番・・・向こうのチーム最年長。イメージ的には運動量の少ないリベロ。
ここまで目立った活躍はないものの、長短含めてパス成功率100%である。
戦力面ではこちらの最年長とトレードしたいぐらいだが、みんな米村さん大好きだから不可能だ。




前山さんが立ち上がる。これ以上変な議論してる余裕はない。
もうすぐ試合終了、この局面で俺にシュート打って勝てと。どんな無理ゲーだ?

まるで踏んぎれない俺の肩を誰かがポン、と叩く。・・・古田くん。「今日は君の日だって、僕も思うよ」
一部始終盗み聞きしてたらしい。彼は言いたい事を言うと、自分の定位置にスタスタ戻っていった。
と、古田くんが何か気づいたように立ち止まり、一言付け加えた。「あ、今のは君がヒーローって意味だからね」
そんな補足いらないっちゅーの!こっぱずかしい!!

「・・・古田さんって、いい人っすね」石川、見直したような顔でポツリ。話がどんどん変な方向に行ってる。
当の古田くんは「さあ、行こうぜ!」と、今まで聞いたことないような大声でチームを鼓舞。
そ、そんなキャラだっけ?坂口さんなんか「おう!」とか応えちゃって。
駄目だ、皆が気持ち悪い。気合入るのはいいけど、俺が抜けた所の守備はどうするんだよ。

「大丈夫、俺戻るから」よ、米村さん!?
「俺15番見るから、後ろ気にしないで上がって」全てを見透かしたような顔で言う。
いえいえ米村さん、守備なんかできないでしょうが!
「全力でやってみるからさ、ひとつ任せてよ」

うー・・・不安だけど、39歳の米村さんがそこまで言うんだ。俺は上がる事にした。
石川、心底嬉しそうな顔してる。


昔から、前線に出るのは落ち着かない。
自分でつないだボールを誰かが取られるのはそんなに腹立たないけど、
皆でつないだボールを自分が取られるのは精神的に痛い。

「石川、フォローしてくれよ」これは俺の本心だった。心細いのだ。
「あ、了解っす」石川は軽く答えてセンターサークル付近へ。
お前、こういう時はあっさりなのか。

(次回へ続く)

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第28話 「点取ってください」

(あらすじ◆市民リーグ1部残留をかけた天王山、2点差を追いついて意気上がる俺達。
一気に大逆転といきたい所だが全体に疲労濃く、決め手の石川がメンタル的問題で精彩欠き始める。
しかし相手も同じようなもの。残り時間わずか、我慢比べの消耗戦を制するのはどっちだ?)

 →前回のお話

<登場人物>

前山さんの奥さん・・・息子の圭くんと一緒に全試合観戦。チーム一番のサポーターと言えなくもない。
サッカーの事はよく知らなかったけど、最近『戻りオフサイド』を理解。石川に教えてやってください。

11番・・・バティストゥータに憧れて肉体改造、強靭なフィジカルを手に入れた。
決定力の問題はあるけど良いFW。そろそろ市民リーグが物足りなくなってきたか?




ここまで(三上がサボってた分)守備に忙殺されていた左サイドバックの前山さん、足がつって倒れこむ。
プロなら外に出して試合続行の場面だけど、こういう時は敵味方関係なく助け合うのが市民リーグの約束事だ。

黒沢さんと相手11番で手伝って、前山さんの足を伸ばしてやる。俺達に代えの選手はいない。
前山さんの奥さんが心配そうに眺めている。子供の圭くんはアリの巣を見つけたらしくそっちに夢中だ。

「先輩・・・」そんな中、石川が思いつめた表情で声をかけてきた。
「もう、駄目です・・・」唐突な物言いに、俺はリアクションを返せない。
「おれ、もう今日は駄目です」奴は言い直した。

「駄目って、何がだよ」ようやくニュアンスをつかんだ。が、真意をはかりかねて聞く。
「今日勝ったら、残留なんすよね」
「いや、まだわかんないけど少し楽にはなるな」
「前山さんも黒沢さんも小玉さんも、先輩も頑張ってるじゃないすか。それなのにおれ、寝坊しちゃって
足引っ張って・・・。おれが点取って勝っても、皆嬉しくないんじゃないかな」大真面目な顔して言う。

どうしてそんな考えになるんだ。寝坊したからこそ、お前がやるんだよ!
という言葉を、俺は飲み込んだ。理屈の通じる奴じゃない。


「・・・先輩、点取ってください」
「は?」またこいつは何を言い出すんだ。
「先輩、チームの大黒柱じゃないっすか。皆の事本当に良く考えてて、尊敬してるんです。
だから今日先輩が点取って勝って、残留する。それって最高じゃないっすか!」
待て、意味わかんねえ。誰が取ったってゴールはゴールだろ。チームが勝てれば俺はそれでいいんだよ。

「おれ、オトリになるんでどんどんシュート打ってください!」
いやいや、勝手に話進めるな。それに自慢じゃないけど、俺はシュートがド下手だ。知ってるだろ?

MFにかかわらずここまでの16試合、得点ゼロ。しかも数少ないシュートは全て枠を外れるかキーパー真正面。
パスなら大体(あくまでも大体)狙った所に蹴れるのに、シュートだと何だか身体がいう事をきかない。
サッカーを始めた中学時代からこの調子で、原因はよくわからない。

(次回へ続く)

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第27話 「というか消耗戦」

(あらすじ◆得点経過→前半36分・直接コーナーキック/古田、後半3分・中盤の崩しから/敵6番、
後半4分・クロスを頭で/敵11番、後半8分・コロコロPK/敵13番、後半17分・高速カウンター/石川、
後半29分・混戦から押し込み/石川。ともに3点を取り合う熱闘、どちらに勝利の凱歌が上がるか!?)

 →前回のお話

<登場人物>

坂口さん・・・クレバーでミスの少ないセンターバック。瞬発力には欠けるため1対1がやや苦手。
ライン統率やオフサイドトラップこそ彼の本領だが、周囲の技量が追いつかずやや不遇である。

10番・・・ゲームの流れが怪しくなってきた頃に投入される。オーラは平凡ながら「効く」選手。
相手の嫌がる作業を延々と続けられるのが持ち味。というかそれしかできない。




1対3から追いつき、ゲームの流れは完全に俺達に傾いた。
一気に畳み掛けて大逆転といきたい所だが、敵も4位の強豪。
交替で入った10番が頻繁にボールを外に出して流れを切り、勢いを削ぎにかかる。これは地味に効く。

もう一人の交替メンバー4番は守備専門のようだ。石川に張り付き仕事をさせまいと頑張る。
普段の石川ならこんな1枚のマークなど何ともないのだけど、まずい事に奴のプレーに迷いが出てきた。
シュートを打つどころか、得点に直結する動きも嫌がりはじめている。

石川が精彩欠き、前線の収まりどころが弱まった事で、情勢は再び五分というか不利となってきた。
サイドを狙われ押し込まれはじめる。カバーリングに奔走してきた坂口さんに疲労の色が濃い。
大竹は完全なキャパオーバー。俺だって全身の筋肉が嫌な感じで熱を持っている。

しかし敵も無傷というわけじゃない。好き放題やられた7番と13番はスタミナ不足を露呈、
チャンスにほとんど絡めなくなった。試合は総力戦というか、消耗戦の様相を呈する。

(次回へ続く)

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